政府が崩壊してからの奇妙な三人の同居生活はあまり代わり映えがしない。
…いや、少し変わったこともある。
「ただいま」
「あ、鷹斗!おかえりなさい。」
「あー、鷹斗くんおかえりなさいー」
そう、変わったこともある。
「うん。レイン。とりあえず離れようか」
『彼』が、彼女を選んだこと。
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『僕、お邪魔じゃないですかー?』
『そ、そんなことないわ。むしろ居てくれないと…ちょっと。』
『あー…』
世界が壊れて、彼女が戻ってきて、俺が目を覚まして、世界はまた改変された。
その中の一つに組み込まれた緩やかな時間のひとつ。
ようやく手に入れた平穏は彼女と友人で過ごす、不思議な時間。
大事なものを亡くした彼と、一度失くした俺はどこかが似ていて、幼い頃出会ってから「ぼくらは似ているね」なんて笑いかけたことを覚えている。
だから。俺はこれで。
「ねえ、レイン。」
「なんですかー?」
撫子は近くの子供に勉強を教えてに行っていて不在。
久々にも思える彼との二人の時間に、俺は静かに口を開く。
「君、撫子のことが好きなんだろう?」
「あー、バレちゃいましたー?ニブい王様は気づかないと思ってたんですがねー?」
悪びれもせずににへら、と笑う彼は相変わらず読めないけれど、それでも彼女から言葉をもらった時の俺のように、少し「人間」になっている気がした。
「うん、まあ。最近ちょっと近すぎかなって思ってたし。」
「あー…やきもちですか…」
「まあレインが彼女を好きでも、彼女が君を好きになっても、それでも俺は諦めないよ。振り向かせる努力をするだけだからね。」
「おっとー?それはつまり宣戦布告ってことでいいんですかー?」
「好きに解釈してくれていいよ。」
『僕も参加していいですか?』
『なにに?』
『貴女の、一番になる戦いに、ですよー。』
彼女が一番幸せになれる結末。
それが俺との結末でも。
もしくは俺と似た、彼と。
どちらでもいい。彼女がただ幸せになれるのなら。
そのためなら、ああ、
あの永遠を嘘に。
------君の幸せがそこにあるのなら。-----
レイン救出後設定。レイ→撫←鷹。
お題:「確かに恋だった(お題bot)」より